― ケアマネさん・ご家族にちゃんと届く説明術 ―
はじめに:説明しているのに、なぜか伝わらない…
56歳で訪問マッサージを開業してから、
何度もこんな場面にぶつかりました。
- ケアマネさんに健康保険の訪問マッサージの仕組みを説明しても「難しいですね…」で終わる
- ご家族に良かれと思って提案しても、反応が薄い
- 自分では一生懸命話しているのに、相手が動いてくれない
正直、こう思ったこともあります。
「いやいや、ちゃんと説明したよね…?」
「なんで分かってくれないんだろう…」
そんなモヤモヤを抱えていた時に出会ったのが、
「伝わる話し方=相手の“思考の解像度”を上げる」という考え方でした。
「自分がうまく話す」のではなく、
「相手の頭の中をハッキリさせる順番で話す」
これが、結果を出す人たちがやっている話し方だと知ったんです。
この記事は、
開業して挫折中の僕が、“もう一度人に伝える力を鍛え直すために”学んだメモとしてまとめたものです。
伝わる話し方のコツは「相手の頭の中をクリアにすること」
今の結論から言うと、
伝わるかどうかは「話の内容」より「話す順番」で決まると感じています。
もっと言えば、
自分がうまく話すことよりも、
相手の頭の中の“モヤモヤ”を取ってあげること。
これが「思考の解像度を上げる」ということだ、と。
訪問マッサージの説明でも、
制度・料金・効果を一方的に並べるのではなく、
相手が自分で「なるほど、こういうことか」とイメージできる順番で話す必要がある、と痛感しました。
なぜ、今までの話し方では伝わらなかったのか?
振り返ると、僕はずっとこんな話し方をしていました。
- 「制度はこうなっていてですね…」と、いきなり答えからしゃべる
- 相手が何に困っているのか聞く前に、こちらの用意した説明を全部出す
- 「もっと考えてください」「それは違います」と、相手の考えを止めてしまう
でも、本で学んだのはこういうことでした。
1. 正解だけ渡しても、人は動けない
「このやり方が正しいです」「ここを直してください」
これだけでは、相手は
「なぜそれが必要なのか」
「自分のケースにどう当てはまるのか」
がイメージできません。
僕も、
「週○回の施術が望ましいですね」とだけ伝えて、
“なぜそうなのか” をセットで説明していなかったことに気づきました。
2. 強い言い方は、相手の“考える力”を奪ってしまう
「それじゃダメなんですよ」
「もっと動かないと悪くなりますよ」
こちらは善意でも、
相手からすると「責められた」「否定された」と感じてしまい、考えるスイッチがオフになってしまうことがあります。
3. 「もっと考えて」は、実はすごく不親切
「もっと考えてください」
「自分で考えないとダメですよ」
これもよくやりがちな言葉ですが、
“どう考えればいいか”の枠組みがないと、人は前に進めないんですよね。
そこで出てくるのが、相手の思考の解像度を上げる「5つのステップ」です。
相手の「思考の解像度」を上げる5つのステップ
僕なりに、
ケアマネさんやご家族と話す場面に当てはめて、この5ステップを整理し直しました。
ステップ1:相手の「やりたいこと・困っていること」をまず言葉にしてもらう
いきなり制度の説明やこちらの提案から入るのではなく、
まずは相手に話してもらう。
- 「今、一番困っていることは何ですか?」
- 「ご本人に、どういうふうに過ごしてほしいですか?」
- 「理想は、どんな日常ですか?」
ここで大事なのは、こちらが答えを急がないこと。
相手の言葉を、主語と述語がハッキリするように一緒に整理していくイメージです。
ステップ2:その「やりたいこと・困りごと」の全体像を一緒に整理する
次に、
- 誰のための話なのか(ご本人・家族・ケアマネ)
- いつ頃までにどうなっていたいのか
- どんな場面で一番大変なのか(歩行・トイレ・食事など)
といった 全体像 を一緒に見ていきます。
例えば、
「ご本人が一番つらいのは、朝起きるときですか?
それともトイレに立つときですか?」
のように、ざっくりした話から、少しずつ絞っていきます。
ステップ3:行動レベルまで具体的に落とし込む
ここからようやく、「では、具体的に何をどうするか」の話です。
- 「週に○回、何分くらいの施術をするか」
- 「どの関節を中心に動かすか」
- 「ご家族が手伝える簡単な体操はあるか」
固有名詞・数字・動詞を使って、誰が聞いてもイメージできるレベルまで落とします。
ここは僕が一番苦手だったところで、
抽象的な言葉(ケアとかサポートとか)ばかり使ってしまう癖がありました。
ステップ4:その行動が「誰に・どんな価値を生むか」を一緒に確認する
行動だけを並べても、相手の心はあまり動きません。
- 「この施術で、ご本人が“自分でできた”という経験を少しずつ増やしていけます」
- 「ご家族の介助の負担が、ここがこう変わります」
というように、
行動 → その先にある“変化・価値”を一緒に描いていきます。
ここまで来て初めて、「やりたいこと」が「意味のあること」に変わっていきます。
ステップ5:行動した先にある“ハッピーエンド”を一緒にイメージする
最後に大切なのが、
行動した未来を具体的にイメージしてもらうこと。
- 「朝の立ち上がりが今より少し楽になっている」
- 「トイレ介助の回数や負担が少し減って、ご家族の心に余裕ができる」
- 「“このくらいならまだ自宅で過ごせるね”と笑って話せる」
こういう未来像が見えないと、
人はなかなか最初の一歩を踏み出せません。
まとめ ― 「答え」を教えるより、「考え方の道筋」を一緒に歩く
この5つのステップを学んでから、
僕はなるべく 「説明する人」から「一緒に整理する人」 に変わろうとしています。
- 正解を押し付けるのではなく
- 相手の中にある気持ち・希望・不安を言葉にしてもらい
- 全体像 → 具体化 → 価値 → 未来
の順番で、相手の“思考の解像度”を一緒に上げていく
これは、山登りでシェルパが歩くペースやルートを調整しながら、登山者を頂上まで導くイメージに近いな、と感じました。
今すぐできる一歩
この記事を読み終わったら、
今日どこかで誰かと話すときに、
いきなり「正解」や「アドバイス」から話し始めるのをやめてみてください。
代わりに、たったこれだけでOKです。
「まず、どうなったら一番いいですか?」
そこから始めるだけで、相手の表情や、会話の深さが少し変わってくるはずです。
僕もまだ修行中ですが、一緒に「伝わる話し方」、練習していきましょう。


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